強姦ごうかん)” の例文
ようぎやの強姦ごうかんやのがあったりしてえらい物騒ですよって、いッつも晩おそう帰るときにはお梅どんが附いてるときでも停留所の前からくるまに乗って行きますさかい
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
君江は事実を知らせると、大勢見舞いに来るのがうるさいのみならず、強姦ごうかんうわさが立たないとも限らないと思って、カッフェーへはただ風邪かぜをひいたことにして置いたのである。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
旅人りょじんにだまされて林の中にり込まれて強姦ごうかんされた村の子守りの話、三人組の強盗が抜刀ばっとう上村かみむらの豪農の家にはいって、主人と細君とをしばり上げて金を奪って行った話
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そして彼は、殺戮さつりくの間に、踏みつぶされた子供や強姦ごうかんされ腹をかれた女などの間で、ときどき休息する。そして、都市を略奪して食卓についてるヨシュアの軍卒のように、彼はうち笑う。
……けれどもトックの昔にり棄てられた、私の右足の幽霊が私に取りいて、私に強盗、強姦ごうかん、殺人の世にも恐ろしい罪を犯させている事がわかったとしたら、私は一体どうしたらいいのだろう。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
月明の肉桂園シナモン・ガーデンで散策中の英吉利奥様イギリスミセス強姦ごうかんし、邪魔シヴァの力を借りて一晩じゅう彼女を破壊しつくし、その死体を馬来籐マライ・ラタン大型籠椅子バスケット・チェアへしっくりと編み込んで、それを車にいや、住まいに、いま楽しく
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
このとき重税を課しては国のためにうれうべき事であると、佐倉宗吾さくらそうごを気取ったまではいいが、佐倉宗吾のように命を捨てたかといえば、なかなか捨てるどころか、かえって強盗ごうとう強姦ごうかんしたものもある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
強姦ごうかんしたとかいう罪とちがって何もはずかしがることはないと云っていながら、労働者のおかみさん達には、それは世の中で一番恐ろしい罪で、みんな学問のある悪者にだまされてやったんだと云って
母たち (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
私には、強姦ごうかんという極端な言葉さえ思い浮んだ。
親友交歓 (新字新仮名) / 太宰治(著)
強姦ごうかんの真似みたいな所業を俺は欲していた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
痛ましい獣的な淫乱いんらんだ。ドイツの頽廃たいはいの底にうなってる、殺害や強姦ごうかんや不倫や犯罪などの熱狂だ……。そして、君たちのほうには、フランスの頽廃のうちにうめいてる、逸楽的な自殺の発作がある……。
強姦ごうかんしてやりたい。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
そこでは、殺戮さつりく強姦ごうかん、狂暴、拷問、えぐり出された両眼、臓腑ぞうふをぬき出された腹など、あまりに開化した選良人らの神経を刺激し、隠れたる野蛮性を満足させるようなものが、見られるのであった。