庚申山こうしんやま)” の例文
この東嶺寺と云うのは松平家まつだいらけ菩提所ぼだいしょで、庚申山こうしんやまふもとにあって、私の宿とは一丁くらいしかへだたっていない、すこぶる幽邃ゆうすい梵刹ぼんせつです。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
記する有り 庚申山こうしんやまけみす幾春秋 賢妻生きてそそぐ熱心血 名父めいふ死して留む枯髑髏 早く猩奴しようど名姓を冒すを知らば まさに犬子仇讐を拝する無かるべし 宝珠是れ長く埋没すべけん 夜々精光斗牛を
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
それから、我に帰ってあたりを見廻わすと、庚申山こうしんやま一面はしんとして、雨垂れほどの音もしない。はてな今の音は何だろうと考えた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
右へ右へと爪先上つまさきあがりに庚申山こうしんやまへ差しかかってくると、東嶺寺とうれいじの鐘がボーンと毛布けっとを通して、耳を通して、頭の中へ響き渡った。何時なんじだと思う、君
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)