小襖こぶすま)” の例文
のぞいてみると、そこは二段落しの床になっていて、中の火燈口のような狭い小襖こぶすまを開けると、母屋の何処かへ抜け穴になっていた。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時、お民は思いついたように、下座敷の小襖こぶすまから薬箱を取り出して来た。その中には医師の小島拙斎せっさいが調合して置いて行ってくれた薬がある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それから向って右の小襖こぶすまに唐美人の絵がある。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そう七郎左衛門は答えて、一丈も二丈もあるような巻き物を奥座敷の小襖こぶすまから取り出して来た。その長巻の軸を半蔵や寿平次の前にひろげて見せた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蚊㡡かや越しではあるが、九尺の大床のわきには、武者隠しの小襖こぶすまがある。その金砂子きんすなごは、内にかくしてある刺客せっかくの呼吸と殺気とに気味悪く燦々きらきらしているではないか。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と恭順は言いながら、黒く塗った艶消つやけしの色も好ましい大きな文箱ふばこを奥座敷の小襖こぶすまから取り出して来た。その中にある半紙四つ折りの二冊の手帳を半蔵の前に置いて見せた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
白綾しろあやの小袖は鮮血を抱いてすでに俯っ伏している。蘭丸は武者隠しの小襖こぶすまを引いてひつぎへ納める如く信長のかばねを抱え入れ、ふたたび静かにそこを閉めて、床の間から退がった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
切壁の小襖こぶすまをあけて、そこをのぞきながらこう言ったのはお粂です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、そこの、火燈口かとうぐち小襖こぶすまを、外からかろく叩く者があった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火燈口かとうぐち小襖こぶすまに手をかけながら、仲居は、膝を折って云った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしろで、小襖こぶすまが開く。——
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小襖こぶすまそと
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)