小室こべや)” の例文
階段が尽きると、百何十尺の空中に、探照燈を据付けた、四方開っぱなしの、火の見やぐらみたいな小室こべやがある。それで行きどまりだ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
果してその下には四坪ほどの小室こべやがあった。机や椅子や戸棚などが所狭いほど置かれているところを見ると、事務室であることに間違いがない。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこは小さなへやらしい。そうして螺旋らせんの階段がある。二人は降り口へ走って行き螺旋階段を下へ下りた。下り切った所に小室こべやがあり、灯火がぼんやりいていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
庭に臨んだ座敷のはずれに三畳敷きばかりの突き出た小室こべやがあって、しゃれた丸窓があった。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かかとの音して、するすると、もすそ気勢けはいの聞ゆるのも、我ながら寂しい中に、夢から覚めたしるしぞ、と心嬉しく、明室あきまの前を急いで越すと、次なる小室こべやの三畳は、湯殿に近い化粧部屋。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし相変らず躊躇ためらいがちに、衣嚢かくしの中で重い銀器を手探りながら、食卓のところに立ちどまって戸口から隣りの小室こべやの方を覗きこんだが、厚い窓掛がおろしてあって真暗で何も見えなかった。
空家 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
そしてその小室こべやの塞つてゐる方の側同志で背中合はせになつた二つの層の事を蜜窩といふのだ。此の蜜窩の一方の側には同じ層の室の入口がみんなあり、第二の層の室は反対の側に開いてゐる。
すると廊下を一つだてた、同じ水に臨んだ小室こべやの方で、やがて小夜子がお愛相あいそ笑いしていると思ったが、しばらくすると再び庸三たちの方へ戻って来た時には、ビイルでもんだものらしく
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼等は円いアーチの会堂のような円い小室こべやに出て来た。
由蔵の部屋は、わずか三畳敷の小室こべやであった。西に小窓が一つあって、不完全な押入が設けられてあった。その押入の中には、柳行李やなぎごうりやら鞄やらが入っている。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小室こべやが作られてあるのであって、その室の中央には必ず一個の箱があるのでございます。
そこはもうどまりらしい地底の小室こべやだった。一人の男が、虚空こくうをつかんでのけるようにたおれている。その傍には大きな箱がほうり出してある。蓋を明け放しだ。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)