寒天かんてん)” の例文
「昨日は石を抱かされたとよ、三度も目を廻して、腰から下が寒天かんてんのやうに碎かれても、口を割らないさうだ、女の剛情なのはこはいぜ」
ですから教室はあの水車小屋ごやみたいな古臭ふるくさ寒天かんてんのような教室でした。みんなは胆取きもとりと巡査じゅんさにわかれてあばれています。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
こういう時寒天かんてんを使うと消化が悪くって病人に食べられないけれどもゼラチンは薬に使う膠質にかわしつでおなかくとすぐに溶けるから病人にも食べられる。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
余は今でも白い金盥かなだらいの底に吐き出された血の色と恰好かっこうとを、ありありとわが眼の前に思い浮べる事ができる。ましてその当分は寒天かんてんのように固まりかけたなまぐさいものが常に眼先に散らついていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寒天かんてんに吹きさらさるるいちゐの木いちゐひびけりふかき夜霜に
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
(この屋根やねかどが五角で大きな黒電気石[※3]の頭のようだ。その黒いことは寒天かんてんだ。その寒天の中へおれははいる。)
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ゼラチンは消化の速いものですがこの場合に寒天かんてんを使うと消化が大層悪くなります。寒天で製したものは病人の食物に用いられません。ゼラチンも冬は三枚半位で出来ます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
めちゃめちゃにこわしてしまったようでからだが風と青い寒天かんてんでごちゃごちゃにされたようななさけない気がした。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
寒天かんてん 二二・八〇 一一・七一 — 六二・〇五 — 三・四四
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
赤い提灯ちょうちん沢山たくさんともされ、達二の兄さんが提灯をって来て達二とならんで歩きました。兄さんの足が、寒天かんてんのようで、ゆめのような色で、無暗むやみに長いのでした。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ひとりではまへ行ってもいいけれど、あすこにはくらげがたくさんちている。寒天かんてんみたいなすきとおしてそらも見えるようなものがたくさん落ちているからそれをひろってはいけないよ。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
(何云うべ、この人あ、人ばがにして。)そしてさわやかにわらった。嘉吉もごろりとそべって天井てんじょうを見ながら何べんも笑った。そこでおみちははじめて晴れ晴れじぶんのこしらえた寒天かんてんもたべた。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)