家附いえつき)” の例文
僕等もNさんの東京からむこに来たことは耳にしていた。のみならず家附いえつきの細君は去年の夏とかに男をこしらえて家出したことも耳にしていた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
先夫人は養家の家附いえつき娘だともいうし養女だともいうが、ドチラにしても若い沼南が島田家に寄食していた時、おもわれて縁組した恋婿であったそうだ。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
敏捷びんしょうそうな三十余りの人です。後になって、その人が小六を妻にしました。養子なのでしたが、家附いえつきの娘をてたのです。その娘は私の学校友達でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
家附いえつきの娘おたかは御殿勤めの美人のきこえたかく、入婿いりむこの久次郎は仏さまと呼ばれるほどの好人物であった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
良三はかの蘭軒門下で、指の腹につえを立てて歩いたという楊庵ようあんが、家附いえつきむすめに生せた嫡子である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一旦人に嫁して帰った家附いえつきむすめで四十歳位のが一人、松さん、こまさんの兄弟があった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)