失敗しま)” の例文
通って、失敗しまった、あんなにお金はつかうんじゃなかったと、悲しげに金魚を眺めているだけなんだよ。何時も何時もそうなんだよ。
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
失敗しまッた」と口へ出して後悔しておくせに赤面。「今にお袋が帰ッて来る。『慈母さんこれこれの次第……』失敗しまッた、失策しくじッた」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
コイツ失敗しまったと、直ぐびに君のもとへ出掛けると今度は君が留守でボンヤリ帰ったようなわけさ。イヤ失敬した、失敬した……
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「あ、失敗しまった!」と、市郎は思わず舌打したうちした。が、現在の位置にあって再び蝋燭をけると云うことは、殆ど不可能であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
失敗しまったと思った。彼には初めての経験だった。——だがこうなってしまった時、彼は不思議に落付きを失っていなかった。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
人々の視線が、ハッとそれに注がれたとき、彼は心に『失敗しまつた』と叫んで素早く立像を持つてゐた手を離してしまつた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
「あッ、こいつは失敗しまった」といって飛び出していった。そこにたしかに首領が立っていたと思ったのに、何処どこへ行ったか、首領の姿がなかった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
してしまって失敗しまったと思ったんです。何の深い考えもなく、全く突発的な出来事だったんです……しかし、僕は、貴女にすまないと思いました。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
偽駅夫! 失敗しまったドーブレクにやられていたと思うと今までの径路が万事了解したのです。解ったと思ったが遅い。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
彼女はパラソルを忘れて来て失敗しまつた! などと眼ぶしさうにして彼の指先きの彼方を眺めた。極く安価なのを一本買つたら好からうと樽野は告げた。
鶴がゐた家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
この「失敗しまった!」の一語が、仏兵助という桶屋さんの口から出たならば、七兵衛おじさんの方にまだ脈があるのですが、万一この「失敗った!」が
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
主翁はこれは失敗しまったと思って、またあごの下からその紐をかけたが、かけてしまうとまた寄って来た。それはじぶん周章あわてているので好く捲けないと思った。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「まア、あなたでも、そんなことを知ってらっしゃったのね。あたし、油断をしちゃって、失敗しまったわ。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
其樣そんうそくもんぢやない。お祖樣ぢいさんは能く知ツてゐるぞ。其の螢籠はんだ、」失敗しまツた! 自分は螢籠を片手にぶらさげてゐた。うなツてはもう爲方しかたが無い。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
見ると、ボーイがまだいるから、こいつは失敗しまったと思い、なるたけ顔を見られないようにしているうち間もなくボーイが出ていった。絲満が二階からおりてきて番台に坐る。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
失敗しまつた。あんまり急いだもんだから、鰯のこけをふくのを、すつかり忘れちやつた。」
「下男?——失敗しまった。そいつは私達の着く前に、町の郵便局まで出掛けたそうです」
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
失敗しまつた。誰かに買はれたなと、自分の祕藏の物を奪はれたやうな嫉妬を感じた。
貝殻追放:011 購書美談 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
失敗しまった! と、思いました。しかし、もうこの道を、後戻りするのも面倒ですから、なるべく南へ下らずに、北東へ道を取っていっそのこと小浜おばまの町へ、出てしまおうと考えました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
失敗しまったね。私阿母おっかさんに来ないように一枚葉書を出しておけばよかった。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
... オヤ何だか焦臭こげくさい、大原さん干瓢が焦付こげつきますよ」大原「ホイ失敗しまった」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
走り出して失敗しまった、と思った。病気の事が頭に浮んだのだ。勿論走ったり出来る身体ではなかった。少し坂を登っても、咳にむせび、息苦しくハアハアと呼吸しなければならなかった程だから。
ひとりすまう (新字新仮名) / 織田作之助(著)
失敗しまつた。此の話はもつと暗くなつてからするんだつけ。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「イヤ、こりゃア失敗しまった。またしくじったかの」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
記者は失敗しまったと思った。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
失敗しまった」
健康と仕事 (新字新仮名) / 上村松園(著)
失敗しまった」
善根鈍根 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
失敗しまったと思ったがさすがの私も七月から十月まで寝込んでいたのであるから、この四階までの大階段は登りきれるものではなかった。
そしてしまいには、彼等が内地でそうされたと同じように「小作人」にされてしまっていた。そうなって百姓は始めて気付いた。——「失敗しまった!」
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
(……失敗しまった。帆村が問題にしている洗面器の下の鼠の死骸と、この鳥籠の一件とは深い関連性があったのか。それに気がつかなかったとは……)
地獄の使者 (新字新仮名) / 海野十三(著)
失敗しまった! 妻の不断に似合わず、いやに気のついたことをしたもんだ。これじゃ、ゴルフに行ったと云うんじゃなかった!)と、後悔したがも及ばず。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
半兵衛は失敗しまったと思って二発目の弾を急いで籠めたが、籠め終った時にはもう野猪の影も見えなかった。
山の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
失敗しまつた/\、用向きをうけたまはらないで駆け出すとは、何といふ粗忽な事であつたらう……」
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
『チェッ、失敗しまったッ。きゃつらをとらえろ! 同、同類だッ。撃放うちはなしても構わんッ、早く!』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
抱えたちの床を敷くと、下座敷は一杯で、銀子は一人の仕込みと二階に寝かされることになっていたが、ひどく酔って帰って来る晩もあって、ふと夜更よふけに目がさめてみて、また失敗しまったと後悔もし
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ほい 失敗しまつた! 本気にはらをたてたか ははゝゝ
「ぢや瀬戸物ぢや無かつたんだな。失敗しまつた。」
失敗しまった……大変なことになったぞ……」
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
ぼくは失敗しまった、と思った。
ひとりすまう (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「あっ、失敗しまった!」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは無事に落ち著いてもたからは二つの山割りか、悪くいけばみ合いになるに決っていた。袴野は失敗しまったとつぶやいたが
そうは云ってしまったものの、私は失敗しまったと思いました。何という気味のわるいことを口にしたのでしょう。にわかに襟元えりもとがゾクゾクしてきました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妹はそして椅子に坐る拍子に、何故か振りかえって、お母さんの顔をちらッと見た。母は後で、その時はあ——あ、失敗しまったと思ったと、元気のない顔をして云っていた。
母たち (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
その一刹那せつな、文学者は失敗しまつたと思つた。
失敗しまつた、紛失なくしちまつたア』
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
失敗しまった!』と叫んだ。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「や、や、失敗しまった!」
銀座幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
失敗しまった!」
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「フフン、そんなことはお里の親の方が考えて、今になって失敗しまったと思ってるよ。こうと知ったらお里を四郎から引放さんで置くんじゃったとナ」
(新字新仮名) / 海野十三(著)
「自殺⁉——失敗しまった」
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)