大薩摩おおざつま)” の例文
二幕目に大薩摩おおざつまがあって、浮舟の君と匂う宮のすだまとの振事ふりごとじみたところがあると、急に顔色がうごいて、ふしをつけて朗読なさりはじめた。
古い暦:私と坪内先生 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
影も形もないものと自由自在にはなしが出来るようになった、実に希代な予言者だと、その山の形容などというものはまるで大薩摩おおざつまのように書きました。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真面目まじめ理屈りくつしんなり諄々くどくどと説諭すれば、不思議やさしも温順おとなしき人、何にじれてか大薩摩おおざつまばりばりと語気はげしく、らざる御心配無用なりうるさしと一トまくりにやりつけられ敗走せしが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大薩摩おおざつまを聞く事を喜ぶのは、古きものの中にも知らず知らず浸み込んだ新しい病毒に、遠からず古きもの全体が腐って倒れてしまいそうな、その遣瀬やるせない無常の真理を悟り得るがためである。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
足のうらがくすぐってえ、といった陽気でいながら、やり、穂高、大天井、やけにやけヶ嶽などという、大薩摩おおざつまでものすごいのが、雲の上にかさなって、天に、大波を立てている、……裏の峰が
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
からかさを拡げて大きく肩にかけたのが、伊達だてに行届いた姿見よがしに、大薩摩おおざつまで押してくと、すぼめて、軽く手に提げたのは、しょんぼり濡れたもいものを、と小唄で澄まして来る。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)