夜見よみ)” の例文
人死にて神魂たま亡骸なきがらと二つにわかりたる上にては、なきがら汚穢きたなきものの限りとなり、さては夜見よみの国の物にことわりなれば、その骸に触れたる火にけがれのできるなり。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
故大町桂月君が「大天橋」と呼んだといふ夜見よみヶ濱から遠く伯耆の大山へかけての眺望であつたらうが、私はむしろその傾斜から見おろした美保の關の港の眺めを取る。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かつて夜見よみはまは綿も植えられ、その和田村あたりにはかすり手機てばたも動きましたが漸次ぜんじ衰えました。絣といえば「倉吉絣くらよしがすり」を想い起しますが、これも残念なことにほとんど歴史を終りました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
足柄郡曾我村五郎丸字夜見よみ、何処へ出るにも馬の背を借りずには街の灯も見ることも許されぬ人煙稀なる草深いところに、遊蕩的性格の持主である私が酒も飲まずに永い滞在が保たれてゐたのは
これから私が訪ねようとする出雲地方とは、いはゆる夜見よみの國である。そしてその夜見の國とは、古代の人の想像した死の國である。どうして出雲地方が死の國であるのか。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
鬼涙きなだ寄生木やどりぎ夜見よみ、五郎丸、鬼柳きりう深堀しんぼり怒田ぬた、竜巻、惣領そうれう、赤松、金棒、鍋川——足柄の奥地に、昔ながらのさゝやかな巣を営んでゐるそれらの村々を私は渡り歩いて、昆虫採集に没頭してゐた。
その村を憶ひて (新字旧仮名) / 牧野信一(著)