とつ)” の例文
「つまらないことを云つてゐる。しかしそれなら君は何故結婚しないんだ。君の云ふやうだととつくに結婚してゐて好い筈ぢやないか。」
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
あの改革案が岩村男の指金さしがねで無かつたら、とつくの往昔むかしに文部省の方でも取りあげてゐたに相違ないといふのは、少しく美術界の消息に通じてゐる者の誰しも首肯する所だ。
尤も俳優の誰彼は、とつくに鹿児島行きを聞き込んで、楽みにしてゐるらしいが、たつた一人梅玉だけは熊本の興行をめに、真つ直に帰つて来るものだと思つてゐる。
尤も氏自身も自分が軍医だつたのは、とつくの往時むかしに忘れてゐるらしく、たまに人が医者の話でもすると、氏はまだ見ぬ地獄の取沙汰とりさたでも聞くやうに変な顔をして耳をかしげてゐる。
「今日まで原さんが首相になれないのも、事によつたらあの頭のせゐかも知れんて。もしかあれが寺内のやうに禿げてでも居ようものなら、とつくに首相になつてたかも知れない。」