夕暗ゆふやみ)” の例文
この取り合はせは彼が現に愛着してゐる、春のこゝろの感ぜられる、静かな画材だつた。そして夕暗ゆふやみがやがてそれを包むのである。
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
暮れなやむ初夏の宵の夕暗ゆふやみに、今点火したばかりの、眩しいやうな頭光ヘッドライトを輝かしながら、青山の葬場で一度見たことのある青色大型の自動車は、軽い爆音を立てながら、玄関へ横付になつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
あとでカンがへるは腕を組んで考へました。桔梗ききゃう色の夕暗ゆふやみの中です。
蛙のゴム靴 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
夕暗ゆふやみに白さ目につく山百合やまゆりの匂ひ深きは朝咲きならむ」
睡蓮 (新字新仮名) / 横光利一(著)
間もなく夕暗ゆふやみの川縁に三人の姿が朧気おぼろげに浮び出した。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
海のやうに擴がつた夕暗ゆふやみの中をぼんやり見詰めた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
夕暗ゆふやみの中にの花畑の中の番小舎の扉を叩きぬ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)