こは)” の例文
旧字:
其代り、此窮窟な主義だとか、主張だとか、人生観だとかいふものを積極的せききよくてきこはしてかゝつたためしもない。実に平凡でい。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はや谷川たにかはおとくと我身わがみ持余もてあまひる吸殻すひがら真逆まツさかさま投込なげこんで、みづひたしたらさぞいゝ心地こゝちであらうと思ふくらゐなんわたりかけてこはれたらそれなりけり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ヂーツと鳴つてゐるのはこはれかゝつたこの家の呼鈴ぢやなからうか。『誰だらう……』と僕はつぶやいて見た。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
又世の中の仕事に関与くわんよするとなると、女に必然に女らしさを失ふやうに思ふ人がある。が、私はさうは思はない。成程なるほど、在来の女らしい型はこはれるかも知れない。
世の中と女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
最早や一点のうたがひもない——彼は今度の労働者大会を内部からこはして、其れを結納ゆひなふとして結婚式を挙げるのだ——彼は我々労働者に取つて獅子身中の虫であるツ——
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「蓋!大きいが、もろい蓋だ!何うかすると、ぶツこはされたり、けたりする。併し直につくろはれて、町の形を損せぬ。ただかはらが新しくなツたり古くなツたりするだけだ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それに硝子瓶をこはせば音がする。八の頭にはこんな出来ない相談が往来してゐる。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
時計の如き、捲くべき時間に必ずネジを捲き、これを正常に扱へば、十年なり、十五年なり、楽にもつものを、或時は捲き、或時は捲かず、或時は手荒く取り扱ふ時は、すぐこはれて、無用のものとなる。
些細なやうで重大な事 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ダンヌンチヨはこれまで沢山の胡桃をこはしたんだらう。
素描 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
ゆきれし一本ひともとにれのもと、なかばこはれし長椅子ベンチ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
このやり方で、憲法はこはしツぱなしにして置いて、増税、増税、増税——何処まで行つて停止するのであるか。畢竟この日本の……………………御仕合せな話である。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ちやうど女主人公の小間使が朋輩の女中の皿をこはしたのを、身に引受けてかばふ処で、——伏拝むこそ道理なれ——といふのを見ました。まとまつたのは、たしかこちらへ参つてからです。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)