“嘘(ふ)” の例文
尊き父の第四の族(やから)かゝる姿にてかしこにありき、父は氣息(いき)を嘘(ふ)く状(さま)と子を生むさまとを示しつゝ絶えずこれを飽(あ)かしめ給ふ 四九—五一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
松田氏の精確なる記性と明快なる論断とが微(なか)つたなら、わたくしは或は一堆の故紙に性命を嘘(ふ)き入るゝことを得なかつたかも知れない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こんな事を思いながら、男は女の手を取って、それを長い間握っていた。そしてその手の上に、ゆるやかに息を嘘(ふ)き掛けていた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
嘘(ふ)き掛けたただの一息で、無(む)にするのを忍ばねばならぬ。
彼は苦(くるし)き息(いき)を嘘(ふ)きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わがわたりゆく水は人いまだ越えしことなし、ミネルヴァ氣息(いき)を嘘(ふ)き、アポルロ我を導き、九のムーゼ我に北斗を指示す 七—九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「死は哲学の為めに真の、気息を嘘(ふ)き込む神である、導きの神(Musagetes)である」と Schopenhauer(シヨオペンハウエル) は云つた。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
(ファウストに息を嘘(ふ)き掛け、退場。)
客観(かっかん)的には元から幽霊は幽霊であったのだが、昔それに無い内容を嘘(ふ)き入れて、有りそうにした主観までが、今は消え失せてしまっている。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
願はくは汝わが胸に入り、かつてマルシーアをその身の鞘(さや)より拔き出せる時のごとくに氣息(いき)を嘘(ふ)け 一九—二一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
二重の息を嘘(ふ)き掛けたりする