周匝まはり)” の例文
さる四辻で、一人の巡査があたかも立坊の如く立つて居た。其周匝まはりを一疋の小犬がグル/\と廻つて頻りに巡査の顔を見て居るのを、何だか面白いと思つた。
雪中行:小樽より釧路まで (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
可哀さうにリツプはこれから先へ一足も行かれません。かれは又た口笛を吹いたり、ヲルフの名を喚んだりして見ても、こたへるものは遙に高い枯木の周匝まはりを飛んで居る惰鴉なまけがらすの一群ばかりです。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
黄金の指環を喞へた鳥は、大きい輪を描いてますと周匝まはりを飛んだ。どうしたのか、此鳥だけは人の顏にならずに。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
三十五六の、齢の割に頬のけて血色の悪い顔、口の周匝まはりを囲むやうに下向きになつた薄い髭、濁つた力の無い眼光まなざし——「戯談じやうだんぢやない。これでも若い気か知ら。」
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其森の奧に、太い、太い、一本の山毛欅ぶなの木があつて、其周匝まはりには粗末な木柵が𢌞らしてあつた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)