呉服物ごふくもの)” の例文
新しい呉服物ごふくもの染糸そめいとにおいが妙に胸悪く鼻につきます。雨はもう降りません。朝夕のひややかさに引換えて、日の照る昼過ぎは恐しいほど暑い。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
尋ねけるに是は四年あとに江戸表へ引越ひつこしたりと言にぞ吾助はたの木蔭こかげあめもる心地こゝちして尚も種々と聞合するに當時は江戸本郷邊に呉服物ごふくものの見世を出し當所より織物類おりものるゐ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
呉服物ごふくものなども、品物しなものみな特別とくべつらせたもので、機織はたおりがなかなかさかんでございました。もっともごく高価こうかしな鎌倉かまくらではわず、矢張やはりはるばるきょうあつらえたように記憶きおくしてります。
荒物屋に少しばかりの呉服物ごふくものを附け加へた家の並んでゐる片側町かたかはまちを通つて、やつと車の通ふほどの野道の、十字形になつたところへ來ると、二人は足を止めて、う行かうかと顏を見合はした。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
もち呉服物ごふくものあきな日々ひゞ繁昌はんじやうなすに近頃ちかごろ其向そのむかう見世開みせびらきをなして小切こぎれ太物ふともの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)