出精しゅっせい)” の例文
お前はこれから他念なく出精しゅっせいして、植木屋として一人前の職人になることを心掛けねばならないと、私はくれぐれもいい聞かせた。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
前の座主マルクス・キンツス・マルチウスの経営中に劣らず出精しゅっせい致しますれば、貴顕紳士は相替らず御贔屓ごひいき御入来を願うと張り出した。
手柄があっても加増も出来ぬとあれば、当藩士の意気組は腐るばっかり。武芸出精しゅっせいの張合が御座らぬ。主君の御癇癖もたかまるばっかり……取潰し結構。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
また多助は江戸表に置きましても稼業に出精しゅっせいしまして、遂におおきな身代となり、追々に地所を買入れ、廿四ヶ所の地面持とまでなり、本所に過ぎたるものが二つあり
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
終日終夜、机と首っ引をして、兀々こつこつ出精しゅっせいしながら、さいと自分を安らかに養うほどの働きもない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
気散きさんじにもなりますことゆえ、御ほうこうのあいまには唱歌しょうかやしゃみせんのけいこをはげみ、わざをみがきまして、いよ/\御意にかないますように出精しゅっせいいたしましたことでござります。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「皆出精しゅっせいであったぞ。帰って休息いたせ」
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
忠通は当座の引出物ひきでものとして、うるわしい色紙短冊と、紅葉もみじがさねの薄葉うすようとを手ずから与えた。そうして、この後ともに敷島の道に出精しゅっせいせよと言い聞かせた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこで君が今のように出精しゅっせいして下されば、学校の方でも、ちゃんと見ているんだから、もう少しして都合つごうさえつけば、待遇たいぐうの事も多少はどうにかなるだろうと思うんですがね
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
翁が能静氏から「道成寺」「卒都婆そとば小町」を相伝したのはこの時であった。それから後、翁の出精しゅっせいがよかったのであろうか。それとも能静氏が、自分の死期の近い事を予覚したものであろうか。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ちと医業の方をも出精しゅっせいしてはどうだ
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)