出処でどころ)” の例文
旧字:出處
社員とともに多少の金を費したるその出処でどころを尋ぬれば、商売に儲けたるに非ず、月給に貰うたるに非ず、いわんや祖先の遺産においてをや。
しかしその費用の出処でどころについては誰にも何の目あてもないので、おしまいにはとうとう三人で笑い出してしまった。(大正九年五月『新小説』)
電車と風呂 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ただの神女群遊には、七処女を言い、遊舞アソビには八処女を多く用いる。現に、八処女の出処でどころ比沼山にすら、真名井の水を浴びたのは、七処女としている。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
いずれの民族においても、動物の説話は最も古く、従ってまた出処でどころ原産地の確かめ難いものとなっている。
若し然うなったら……と目をいて夢を見ていたのも昨日きのうや今日の事でないから、何でもでも東京へ出たいのだが、さて困った事には、珍しくもない話だけれど、金の出処でどころがない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
行く処がないので来る人だとも思う筈がない。この事は言訳をせずとも自然にうまく行ったが、金の出処でどころについて疑いをかけられはせぬかと、場所柄だけに、わたくしはそれとなく質問した。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
声の出処でどころが、倫理を講ずるようにはかぬ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かえりみて我が身の出処でどころたる古学社会を見れば、その愚鈍暗黒なる、ともに語るに足るべき者なく、ひそかにこれを目下に見下して愍笑びんしょうするのみ。
ここに至って、わたくしの職業は言わず語らず、それと決められたのみならず、悪銭の出処でどころもおのずから明瞭になったらしい。すると女の態度は一層打解けて、全く客扱いをしないようになった。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
とても親元へ十円の仕送りの出処でどころがない。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)