凌駕りようが)” の例文
薄暗くて立ちめた湯気の濛々もうもうたる中で、「旭川は数年にして屹度札幌を凌駕りようがする様になるよ」と気焔を吐いて居る男がある。
雪中行:小樽より釧路まで (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
湖州の前人を凌駕りようがする所以はこの人間全体を指摘した烱眼に存してゐる。湖州自身も史上の人物に人間全体を発見することは絶えず工夫を凝らしたものらしい。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もつとも主人の島五六郎は、大奧の利け者で、祿高三百石、役高五百石、合せて八百石に過ぎませんが、權勢は遙かに數千石取の大身を凌駕りようがし、用人風情の川前市助までが、同行の御家人
病弱な室長の寝小便の罪を自分で着て、蒲団ふとんを人の目につかない柵にかけて乾かしてもやつた。うしてたうとう荊棘いばらの道を踏み分け他を凌駕りようがして私は偏屈な室長と無二の仲好しになつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
われは何物をも凌駕りようがせむとはせず、たゞ眞の人たるを欲す。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
小説家兼批評家の場合もやはりこの事実と同じことである。僕は「鴎外全集」第三巻を読み、批評家鴎外先生の当時の「専門的批評家」を如何に凌駕りようがしてゐるかを知つた。