ひひ)” の例文
むこうなる、海のおもにむらむらとはびこった、鼠色の濃き雲は、彼処かしこ一座の山を包んで、まだれやらぬ朝靄あさもやにて、ものすさまじく空にひひって、ほのおつらなってもゆるがごときは、やがて九十度を越えんずる
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
箒を逆にして空にひひらせたようなその梢に、どうしてのこったかたった一枚、真赤な楕円形の朽葉がひらひら動いていた。それが透明な二月の碧空の前に、ぽちりと滴った血のように美しく見える。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
空にひひるあり。