)” の例文
「いや、もうたと子供を見ることはできないだろう、何となくそう思われる。いつまでも子供をみていることはできなくなるだろう。」
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
而も、手を挙げて合図した彼の胸のポケットには、幼い英司君の写真が収められてゐたのだと思ふと、たしても、涙を誘はれるのである。
旧友の死 (新字旧仮名) / 辰野隆(著)
この愛慕は一の目的物にあつまりて、而して四散せり、四散せるものた聚りて或一物の上に凝れり、彼の以後の生涯、是を証するを見るべし。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
馬鹿な、マアどうでも可いさと口に出して呟いたが、何故なぜ那麽あんな事云つたらうとた考へる。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そのとき、食堂の方でた父親の話し声がした。
(新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
翌朝になると、彼等はたのこのこと、馬の糞のように集まって来て、箱の前に呑気のんきな顔を列べて、愛書家の群を待っている。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
「父からのかたみでこれだけは残しておいたもの、た会う日に返してくれればいい、我らのかたみにしまっておいてくれ。」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
秋待顏あきまちがほの萩の上葉うはばにいこひもやらず、けさのあはれのあさがほにふたゝびたびをうちてた飛び去りて宇宙ちうに舞ふ。
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
そういう失敗のあとでは彼女は真赤な顔をし、そしてた遣りなおしたりした。わたしはういう失敗のあるごとに、マテニを好ましくかんじた。
ヒッポドロム (新字新仮名) / 室生犀星(著)
殺す者は殺さるゝ者となり、殺さるゝ者はた殺す者となる。勝と敗と誰れか之を決する。シイザルの勝利、拿翁ナポレオンの勝利、指を屈すれば幾十年に過ぎず、これも亦た蝴蝶の夢か。
最後の勝利者は誰ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
すると、先生がた同じ訓戒を始めからやりなほして『苟も学生が粉黛をほどこして……』と来るので、三人は新たに顔を見合せては、仕方なしに腰を落ちつけてしまふのだつた。
浜尾新先生 (新字旧仮名) / 辰野隆(著)
ところがその晩障子が開いたには開いたが、その金の棒のあるために、きゅうに部屋の中へ這入って行ってしまって、たと出てこないんだそうです。
不思議な国の話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
といふのは、今から二十五六年前に、長谷川如是閑氏の吐いた警句であるが、氏は近頃た、悉く書を信ぜば書なきに如かずといふ怠け者の格言を、悉く書を信ぜざれば書あるに如かず、と訂正した。
書狼書豚 (新字旧仮名) / 辰野隆(著)
別な声がいうと、さきの声がたこれに答えた。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)