側立そばだ)” の例文
水に臨んだ紅葉こうようの村、谷をうずめている白雲はくうんむれ、それから遠近おちこち側立そばだった、屏風びょうぶのような数峯のせい、——たちまち私の眼の前には、大癡老人が造りだした
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
他の二人も老人らしくつこらしい打扮だが、一人の褐色かっしょく土耳古帽子トルコぼうしに黒いきぬ総糸ふさいとが長くれているのはちょっと人目を側立そばだたせたし、また他の一人の鍔無つばなしの平たい毛織帽子に
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私は我知らず耳を側立そばだてているのだった。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
平中は耳を側立そばだてた。成程なるほどふと気がついて見れば、不相変あひかはらず小止をやみない雨声うせいと一しよに、御前ごぜんへ詰めてゐた女房たちが局々つぼねつぼねに帰るらしい、人ざわめきが聞えて来る。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)