仕損しそこな)” の例文
しかもあの時、思いがけない、うっかりした仕損しそこないで、あの、おそめの、あのからだに、胸から膝へ血を浴びせるようなことをした。——
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭痛がするで遅くなりましたとみんな怠惰なまけられるは必定ひつじょう、その時自分が休んで居れば何と一言云いようなく、仕事が雨垂あまだれ拍子になってできべきものも仕損しそこなう道理
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これが駆落かけおちでなくって、遠足なら、よほど前から、何とか文句をならべるんだが、根が自殺の仕損しそこないから起った自滅の第一着なんだから、苦しくっても、つらくっても
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
清十郎の追払れたりし時には未だ分別のちまたには迷はざりしものを、このお夏の狂愛に魅せられし後の彼は、早や気は転乱し、仕損しそこなふたら浮世は闇、跡先見えぬ出来心にて
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
というのはほかでもない、彼の父なる小左衛門が、わずか式第の仕損しそこないから主殿頭に睨まれて役付いていた鍵奉行から、失脚させられたという事が、数ヵ月前にあったからであった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この頃の或る新聞に、沼南が流連して馴染なじみの女が病気でている枕頭ちんとうにイツマデも附添って手厚く看護したという逸事が載っているが、沼南は心中しんじゅう仕損しそこないまでした遊蕩児ゆうとうじであった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「これまで一度だつて仕損しそこなつた事のない手品なので御座いますが、今日はまた散々の不首尾で、お詫の申上げやうも御座りません。」手品師は子供の掌面てのひらで蝉の泣くやうな声をした。
あ「おっかさん又お鉢の中へ手を突込んで仕損しそこないをすると私が困りますから」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)