世尊せそん)” の例文
おくを造るに巧妙たくみなりし達膩伽尊者たにかそんじゃの噂はあれど世尊せそん在世の御時にもかく快きことありしをいまだきかねば漢土からにもきかず、いで落成の式あらば我を作らん文を作らん
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
世尊せそんさえ成道じょうどうされる時には、牧牛ぼくぎゅう女難陀婆羅むすめなんだばらの、乳糜にゅうび供養くようを受けられたではないか? もしあの時空腹のまま、畢波羅樹下ひっぱらじゅかに坐っていられたら、第六天の魔王波旬はじゅん
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これ全く釈迦牟尼如来しゃかむににょらいの加護力による事であるという感が一層深くなったものですから、その時にまた世尊せそん釈迦牟尼仏に対し礼拝らいはいをし、それからそのうちに感じた二、三の歌があります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
悟浄ごじょうよ、あきらかに、わが言葉を聴いて、よくこれを思念せよ。身のほど知らずの悟浄よ。いまだ得ざるを得たりといいいまだあかしせざるを証せりと言うのをさえ、世尊せそんはこれを増上慢ぞうじょうまんとて難ぜられた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
笑う事を学ぶためには、まず増長慢を捨てねばならぬ。世尊せそん御出世ごしゅっせいは我々衆生しゅじょうに、笑う事を教えに来られたのじゃ。大般涅槃だいはつねはん御時おんときにさえ、摩訶伽葉まかかしょうは笑ったではないか?
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)