世事せいじ)” の例文
世事せいじ紛紜ふんうんとして慨嘆を長うす、人情浮薄にして日に推移す。知るやいなや十ゆう三年の後、頑鈍がんどん依然としてひとを守るを。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
世事せいじようやく繁多なるに際し、政治家の一挙一動のために、併せて天下の学問を左右進退せんとするの勢なきに非ず。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
喜んだ。しかし世事せいじ逆覩げきとすべからざるものである。柏軒先生は京都に客死して、わたくしの薦めた志村は僅に塩田とともに病牀に侍し、又後事を営んだに過ぎなかつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
世事せいじ測る可からずといえども、薙髪ちはつしてきゅうを脱し、堕涙だるいして舟に上るの時、いずくんぞ茅店ぼうてんの茶後に深仇しんきゅう冥土めいどに入るを談ずるの今日あるを思わんや。あゝまた奇なりというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今天下の士君子、もっぱら世事せいじ鞅掌おうしょうし、干城かんじょうわざを事とするも、あるいは止むをえざるに出ずるといえども、おのずからその所長所好なからざるをえず。
中元祝酒の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし世事せいじの転変は逆覩げきとすべからざるもので、五百は本所ほんじょで死ぬることを得なかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今の世事せいじの成行を目撃せしめたらば、必ず大いに驚駭きょうがいして、人倫の道も断絶したる暗黒世界なりとて、痛心することならんといえども、いかんせん、この世態せいたいの変は、十五年以来
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)