不手際ふてぎわ)” の例文
三十枚四十枚と訳しおわると直ぐ読返しもしないで金に換えたものであるが、それでも二葉亭の飜訳としてはかなり不手際ふてぎわであっても
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
皮付きの松丸太を極めて不手際ふてぎわに組み立て屋根の上には強北風トラモンタアヌよけのごろた石を載せたという堂々たる『極楽荘』に行き当った。
「おいいつけの如く、諸事、取り運んだつもりでございますが、何分、急な御秘命、不手際ふてぎわのところは、おゆるしを仰ぎまする」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまたま今度うずの中に巻き込まれた事件が、破談になるのは避け難いとしても、自分の不手際ふてぎわもあって関係者に気まずい思いを残すことになり、そうしてそれが
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
放つ矢のあたらぬはこちらの不手際ふてぎわである。あたったのに手答てごたえもなくよそおわるるは不器量ふきりょうである。女は不手際よりは不器量を無念に思う。藤尾はちょっと下唇をんだ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……そちこち御註文ごちゅうもんの時刻でございますから、何か、不手際ふてぎわなものでも見繕って差し上げます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
流星は長い間の伝統を維持して来ただけに、構造製作が原始的であるのはまぬかれ難い。しかもここ数年中止していた挙句あげくのことで、余計不手際ふてぎわになったのであろう。それでも鶴見は満足した。
何とも不手際ふてぎわなことであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
亀山領内の民治には、明主ぞ仁君ぞと仰がれていながら、その政治的手腕にも似あわず、軍事にかけては、焦心あせり気味がみえ、不手際ふてぎわが目立った。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともかく、ひと頃は、織田家の一家老のひとりとうやまわれ、信長麾下のぶながきかの名将といわれた彼にして、蟹江かにえ籠城ろうじょうに立ち至ったことは、何としても、その不手際ふてぎわにあわれすら催される。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)