不実ふじつ)” の例文
旧字:不實
けれども相当の地位をつてゐる人の不実ふじつと、零落れいらくの極に達した人の親切とは、結果に於てたいした差違はないと今更ながら思はれた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『命せえあればまたどんな事でもできらア。銭がねえならかせぐのよ、情人いろ不実ふじつなら別な情人いろを目つけるのよ。命がなくなりゃア種なしだ。』
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「お察し申しますよ」と、年増はすこし阿諛おもねるようにしみじみ言った。「向柳原はほんとうにどうしたんでしょう。まったく不実ふじつですね。そんな義理じゃないでしょうが……」
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
即ちくちびると手と一致いつちせざるものなり、即ち宗教をろうするものなり、即ち世の中に誠実せいじつてふものゝ実在じつざいするをしんぜざるものなり、即ち不実ふじつの人なり、即ちいま真理しんり会釈くわいしやくせざる人なり。
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
不実ふじつ性質たちではないから、大丈夫だけれども、何時迄いつまでも遊んでたべてゐる訳には行かないので、安否のわかる迄は仕方がないから、さとへ帰つてまつてゐるつもりだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)