七転八倒しちてんばっとう)” の例文
旧字:七轉八倒
机博士はみるみるうちに、全身ぜんしん針鼠はりねずみのようになって、床のうえに倒れ、しばらく七転八倒しちてんばっとうしていたが、やがて、ピッタリ動かなくなった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
のちに、一座の女たち——八人居た——楽屋一同、そろつて、を磨いたおのかんざしをさした。が、よるると、油、白粉おしろいふちに、の乱るゝ如く、黒髪を散らして七転八倒しちてんばっとうする。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
M氏は、「そうだったかな」と気軽く言い、小首をひねりながら、村川をさがしに行きましたが、ぼくは、居たたまれず、船室に駆けこみ、頭をおさえて、七転八倒しちてんばっとうの苦しみでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
君が私に殺される幻想を恍惚こうこつとしてくなくむさぼるのがここ数年の私の生き甲斐であった。君は地上の誰よりも狼狽してもがくであろう。現に私の幻想の中で、君は最も醜い姿で七転八倒しちてんばっとうしている。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)