七月ななつき)” の例文
それから細君が妊娠して七月ななつきになつてゐるといふことを思ひ出す。さつき不意に杉村の忠告を受けたとき、種々の想像が頭のうちに画かれた。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いや聞いて貰いたい。お前の顔を見なくなってから、やがて七月ななつきになる。その間には、私には種々いろんなことがあった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
だから吾妻鏡に従うと、景茂たちの猥らは、静が七月ななつきのときになる。七月にもなる妊婦では、どう考えても、事がおかしい。君命の下に預かり中の女人でもある。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だってようよ七月ななつきですもの。私顔も見ませんでしたよ。淡白さっぱりしたもんです」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何時までも何時までも人形と紙雛あねさまとをあひ手にして飯事ままことばかりしてゐたらばさぞかし嬉しき事ならんを、ゑゑ厭や厭や、大人に成るは厭やな事、何故なぜこのやうに年をば取る、もう七月ななつき十月とつき
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すでに七月ななつきしこともなし
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たべかけた朝飯の箸を持ったまま、急に目のくらくらして来たお島は、声を立てるまもなく、そこへたおれてしまったのであったが、七月ななつきになるかならぬの胎児が出てしまったことに気の附いたのは
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)