一儲ひともう)” の例文
「君のものなんぞ出さなくったってい。何しろ、樺太からふとで、蟹の缶詰で一儲ひともうけしようと思ったのだが——蟹はあるが、缶の方がうまくいかなかったんだ。」
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「今、話していたろう、河から金時計が湧くっていう話。……あれはネ李鴻章が、この夏、密輸入をして一儲ひともうけしようとして失策しくじったしろものなんだよ」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただこの景色を一ぷくとして、一かんの詩として読むからである。であり詩である以上は地面じめんを貰って、開拓する気にもならねば、鉄道をかけて一儲ひともうけする了見りょうけんも起らぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東京の寺や墓地でも引張ひっぱって来て少しは電鉄沿線の景気をつけると共に、買った敷地を売りつけて一儲ひともうけする、此は京王の考としてさもありそうな話である。田舎はもとより金が無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
だが、世間にはまた働く貴族といふ者があるにはある。五ヶ国語を話してトーマス・クックの案内人を勤める伊太利イタリー男爵もあれば刺繍ししゅうとピアノを教へる嫁入学校をこしらへて一儲ひともうけする波蘭ポーランド伯爵もある。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「も一儲ひともうけするのなら、抱月さんと別れて見せることだ。人気がけば金もはいる」
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)