一位いちい)” の例文
そしてそういう秋までには梅、一位いちいあんず、桃が間もない春には、いかに美しく暖かに咲き出るかということを少年は解いた。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
まずこの山が飛騨の国の中央の位置にある。古来帝都に奉り、御笏おんしゃくの料とした一位いちいの木(あららぎ)を産するのでも名高い。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
下津川山以来殆ど見なかった偃松が割合に多く、それに交って一位いちいも生えている。笹や楢などのあることはいう迄もない。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
大木好きの三輪さんは一位いちいの木というのに感心して、僕達が上り込んでも未だ空を仰いでいた。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
経之は近よったはぎ野が下枝の張った一位いちいの木から、ほっそりとうかび出た姿はまぎれもないはぎ野であることを、近々と、はっきりと見取った。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
一位いちい拗曲ようきょくした古木が竹の中に枝を拡げて、稀に来る人間の足を払ったり胴を支えたりする。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
しかも、新しい一棟の庭の樹々は一位いちいも松の木も、みな昔のままだった。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)