木枯紀行こがらしきこう
——ひと年にひとたび逢はむ斯く言ひて 別れきさなり今ぞ逢ひぬる—— 十月二十八日。 御殿場より馬車、乗客はわたし一人、非常に寒かつた。馬車の中ばかりでなく、枯れかけたあたりの野も林も、頂きは雲にかくれ其処ばかりがあらはに見えて居る富士山麓一 …