髪の毛と花びらかみのけとはなびら
「もつと早く読んでいゝよ」 机の上におつかぶさるやうな姿勢で、夫は点字機を叩いてゐた。 美津子は、コタツにあたりながら、文庫版のメリメの短篇「マテオ・ファルコオネ」を、区切り区切り、調子をつけて読みあげてゐる。 結婚このかた、美津子は、かう …