風船玉ふうせんだま
ぱつと日がさして、風なきまゝに、運動にとて、電車を閑却して、家路さして歩く。雨餘の泥濘殘れり。危くも轉ばむとして漸く支へたるが、その拍子に、右足に穿きたる足駄の前齒拔けたり。それを入れむとして見れば、やれ/\前齒の入るべき溝の底より前へかけ …