幸福の彼方こうふくのかなた
西陽の射してゐる洗濯屋の狭い二階で、絹子ははじめて信一に逢つた。 十二月にはいつてから、珍らしく火鉢もいらないやうな暖かい日であつた。信一は始終ハンカチで額を拭いてゐた。 絹子は時々そつと信一の表情を眺めてゐる。 長らくの病院生活で、色は白 …