黒天鵝絨くろびろうど)” の例文
とお千さんは、伊達巻一つのえん蹴出けだしで、お召の重衣かさねすそをぞろりと引いて、黒天鵝絨くろびろうど座蒲団ざぶとんを持って、火鉢の前をげながらそう言った。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黒天鵝絨くろびろうどの大座蒲団にきちんと坐って、「寒い。」と肩を一つゆすっておいて
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きかぬ気らしいかみさんの、黒天鵝絨くろびろうどの襟巻したのが、同じ色の腕までの手袋をめた手に、細い銀煙管ぎんぎせるを持ちながら、たなが違いやす、と澄まして講談本を、ト円心まるじんかざしていて、行交う人の風采ふうつき
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何じゃい。」と片手に猪口ちょくを取りながら、黒天鵝絨くろびろうど蒲団ふとんの上に、萩、菖蒲あやめ、桜、牡丹ぼたんの合戦を、どろんとした目で見据えていた、大島揃おおしまぞろい大胡坐おおあぐらの熊沢が、ぎょろりと平四郎を見向いて言うと
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)