高野豆腐こうやどうふ)” の例文
物食べる時かて、唇に触らんように箸で口の真ん中へ持って行かんならんよってに、舞妓まいこの時分から高野豆腐こうやどうふで食べ方の稽古けいこするねん。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「何がって、ばかばかしい、大事な約束を前にしながら、この寒空に、龍平を高野豆腐こうやどうふみてえに忘れッ放しでいいんですか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雑巾ぞうきんまで売っている都会の生活にあきれながら、となりの米屋で白米一升を袋に入れてもらい、八百屋やおやにより、乾物屋で高野豆腐こうやどうふと切り干大根を買った。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
ことに妻子などありてやや年取りたる人が金州の市街の不潔なると軍隊の糧食のうまからぬとに因りて皆帰思しきりなる時に際してわれは市街の不潔をも嫌はず食料の高野豆腐こうやどうふ凍菎蒻こおりごんにゃくのみなるを
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
発育盛りの年頃にしては前から食慾が旺盛おうせいでないのであるが、その傾向が募って来て、毎食一二ぜんしか食べず、お数も、塩昆布しおこんぶとか、高野豆腐こうやどうふとか、老人の食べるような物を好み
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
六時半に夫は散歩から帰って来、七時に二人で食事をした。若筍わかたけの吸い物、蚕豆の塩うで、きぬさやと高野豆腐こうやどうふき合せ、———昨日錦で買って来た材料を婆やが料理したのである。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)