髑髏しやれかうべ)” の例文
大森氏はためつすがめつ髑髏しやれかうべを見てゐた。ちやう梅雨つゆ時分の事で、髑髏しやれかうべからは官吏や会社の重役の古手ふるてから出るやうな黴臭かびくさ香気にほひがぷんとした。
仰々ぎやう/\しく言出いひだすと、かたき髑髏しやれかうべか、毒藥どくやくびんか、とおどろかれよう、眞個まつたくことひませう、さしたるでない、むらさききれけたなりで、一しやくずん一口ひとふり白鞘しらさやもののかたながある。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その事を思ふと、クロムヱルの髑髏しやれかうべが二つ出たところで格別差支さしつかへはない。あるひはもつと捜したら、もつと出るかも知れない。
「宋版の一切経さいきやう山楽さんらくの屏風を見せたところで、解りさうにもなし、やつぱり将門の髑髏しやれかうべを見せるに限る。あれならばまさか貰つて帰るとも言ふまいから。」
学問の力は偉いもので、かうして英雄の亡くなつたあとからその髑髏しやれかうべを二つ迄も拵へる事が出来る。
清教徒の英雄クロムウヱルに髑髏しやれかうべが二つある。一つはオツクスフオード大学に、今一つは倫敦ロンドンの考古博物館に秘蔵せられてゐる事は、いつぞや書いたことがあつたやうに思ふ。