頭文字イニシアル)” の例文
これは死の素描デツサンではないのか? 一本一本針を刺されながら、いつのまにか僕の腕に、死の頭文字イニシアルの見事な入墨が、完成されつつあるのではないのか?
死の素描 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
外国の無頼漢用の骸骨スケレトン式のものか、それとも普通の恋愛沙汰から来たハート型に頭文字イニシアルの組合わせ式のものかというような事は、ちょっと判別出来なかった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこで私は、手紙を取り出した。封印は頭文字イニシアルのFだ。封を切つて見ると、内容は簡單だつた。
彼の頭文字イニシアルを入墨しようと
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ポンド入りのかんの上に貼った黄色い紙に、C・Pという頭文字イニシアルと、その植物の絵が印刷してあります
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は明君にAといふ字の頭文字イニシアルのついた外交官を知つてゐるかと問うた。彼は最近歸朝したベルギイ公使がAと言やしないかと答へた。して見ると、そのA公使のお孃さんかも知れない。
エトランジェ (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
持主の頭文字イニシアルは初めから縫い付けてないらしく引き剥がした痕跡もない。外套、上衣とも襟の処には葉巻の芳香と、熟柿じゅくし臭い臭気とがみ込んでプンプンと匂っている。帯革は締めず。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)