頑張ぐわんば)” の例文
階下は母屋おもやと廊下でつながつて、六疊と四疊半の二た間。四疊半は物置同樣で、六疊は用心棒の力松が夜晝の別なく頑張ぐわんばつて居るのです。
彼奴の友達の部屋で夜明かし飲んで、朝まで頑張ぐわんばつてみたが、到頭たうとう帰つて来ないんだ。その相手の男も大凡おほよそ見当がついてゐるんだ。此処へも二三度来た歯医者なんだ。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
国民は軍隊の有難さを百も承知してゐるんだから、君たちは大いに頑張ぐわんばつて差支ない。治にゐて乱を忘れない心掛けは、乱にゐて治を忘れない心掛けと相通じるのだ。さういふおれだつて補充兵だ。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
軍人は人道の敵だとまで思つて居なさる梅子さんが、ことに不品行不道徳な松島様などに御承諾なさるはずが無い、又たし其れが真実ならば必ず梅子さんから、御報知おしらせがある筈だと頑張ぐわんばつたのですよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
こんな一隅で、頑張ぐわんばつてゐるには、ゆき子は淋しすぎた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「番頭の平吉が、部屋の入口に頑張ぐわんばつて誰も入れさせないことにしてありますよ。それに死骸の側には煙草入が落ちてゐたんで」
松やと一緒に寝かさうと思つても、何うしても厭だと言つて頑張ぐわんばるし、煙草でも買はせにやれば、入りこんで油を売つてゐるし、長くゐるうちには近所隣り何処へでも入りこんで、困ると思ふわ。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「もう一度行きますよ、親分。明日は姿を變へて平内へいない樣のお堂の前に頑張ぐわんばつて、三日分ばかり兵糧ひやうらうを背負つてつけたらどんなもので——」
「ところで用件は何だ。美しいところを見せようて寸法ばかりぢやあるまいね。大方納戸の前に頑張ぐわんばつて居る石原の一件だらう」
「入つちやならねえ、入つた奴には皆んな下手人の疑ひがかゝるぞ。八、其處で頑張ぐわんばつて、一々出入りの顏を調べろ」
「一日頑張ぐわんばつたが、それつ切り出て來ませんよ。あの風體だから、見落す筈は無いんだが——」
殘るのは梯子段が一つ、その下には用心棒の力松が、一と晩頑張ぐわんばつてゐたことに間違ひはなく、力松が下手人でない限り、こゝから曲者が忍び込むことなどは思ひも寄りません。
お榮はお勝手に頑張ぐわんばつて居たわけではなく、曲者はお榮が部屋の掃除さうぢでもして居る間に、そつと忍び込んで、仕掛けた味噌汁の鍋の中に、毒藥を抛り込む隙は充分にある筈です。
一時のこらしめだから、甥の吉太郎を厚木から呼寄せるのが順當だと申して、私には義理の叔父で、小松屋の支配人をして居る安兵衞と申すのが、獨りで頑張ぐわんばつて、到頭甥の吉太郎を
「あわてちやいけない。俺は江戸の町方の御用聞だから、八州の役人が頑張ぐわんばつて居ちや、いくら兄哥の手傳ひでも仕事が出來ない。斯う追つ拂つて置いて、それから仕事をはじめるのさ」
手でも棒でも引寄せられないし、部屋の入口には番頭の平吉が頑張ぐわんばつて居る
この上頑張ぐわんばつて居ても、何の手掛りも見つかりさうはなかつたのです。
入口に頑張ぐわんばつて居たのは支配人の祿兵衞。
「八、お前は此處で頑張ぐわんばつてくれ」