面差おもざし)” の例文
お島はどうかすると、父親の面差おもざしの、どこかに想像できるような小野田の或卑しげな表情を、いて排退はねのけるようにして言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
気が付いたか、八、若い娘と六十の爺さんだ。ちょっと見じゃ似たところもないが、何かの拍子に、二人の面差おもざしに似たところがある。それを
山崎長之輔ノ一座ニ属シ中洲ノ真砂座ニ出テイタガ、ヤヽ老イテカラハ六代目ノ面差おもざしニ似テイタ先代嵐芳三郎ノ相手役トシテ宮戸座ニ出テイタ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこで、提灯の間に、二人のかおが合いました。いずれも覆面はしておりません。かすかながら提灯の光は、二人の面差おもざしを映し出すに充分でありました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
以前から見ると面差おもざしおだやかになって、取別とりわけて児供に物をいう時は物柔ものやさしく、こうして親子夫婦並んだ処は少しも危険人物らしくも革命家らしくもなかった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そうこうしているうちに婦人連は立ち去ってしまって、あのなよらかな面差おもざしと、なよらかな姿態と共に、可愛らしい娘の顔もいつしか幻のように消えてしまった。
そしてどちらかとへば面長おもながで、眼鼻立めはなだちのよくととのった、上品じょうひん面差おもざしほうでございます。
まれには国々のうるわしき少女おとめを、花のようにめるおもわ、月の光りのように照れるおもてとうたって、肌のつや極めてうるわしく、額広く、うれいの影などは露ほどもなく、輝きわたりたる面差おもざし晴々として
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
將軍家光に面差おもざしの似た與力笹野新三郎を替玉に使ひ、見事にその裏をいて取つて押へたのでした。