面差おもざ)” の例文
貞奴はその妹分の優しい、初々ういういしい大丸髷おおまるまげの若いお嫁さんの役で、可憐かれんな、本当にの貞奴の、廿代はたちだいを思わせる面差おもざしをしていた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
サイゴンに行く篠井春子は、五人のなかでも一番美人で、一寸李香蘭りかうらんに似た面差おもざしがあつたので、幸田ゆき子なぞの存在は、誰にも注意されなかつたのだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
聞き手は、隠居のいかにも仕合せそうなにこやかな面差おもざしを見て自分もやはり仕合せな気がするのだった。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
妹とよく似た面差おもざしはしていますが、これは妹と違って細面の、あでやかなひとみ……愛らしい口許くちもと……たかい鼻……やっぱりふさふさとした金髪を、耳の後方うしろで付けて、せいも妹よりは
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
お前と菊治が子供の時から一緒に育つたせゐが、赤の他人のくせに、不思議に面差おもざしが似て居る、——俺はそれに騙されて、幾日も/\無駄にした上、三人も五人も餘計殺生せつしやうをさして了つた。
その人の面差おもざしが私によくているというのよ。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
のんびりした面差おもざしであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)