青天せいてん)” の例文
小督の失踪は、主上にとっては、青天せいてん霹靂へきれきであった。昨日まで生きいきと輝いていたお顔が、一日の内にすっかり肉が落ちて、目がくぼんできた。
彼等かれらが気づいた時は、世間一般も同時に知っていた。それは青天せいてん霹靂へきれきにも似て世の耳目じもくおどろかしたからである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東町奉行所で白刃はくじんしたのがれて、瀬田済之助せいのすけが此屋敷に駆け込んで来た時の屋敷は、決して此出来事を青天せいてん霹靂へきれきとして聞くやうな、平穏無事の光景ありさまではなかつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いわんや青天せいてん霹靂へきれきなどは絶無である。その代りに揚がりぎわもよくない。雷も遠くなり、雨もやむかと見えながら、まだ思い切りの悪いようにビショビショと降っている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
青天せいてん霹靂へきれきにもたとうべくや、所詮しょせんは中江先生も栗原氏も深き事情を知り給わずして、一図いちずに妾と葉石との交情を旧の如しと誤られ、この機を幸いに結婚せしめんとの厚意なるべし。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
おそらく、この飛報は、青天せいてんのへきれきとして、富山城の佐々成政の耳を打ったろう。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、思うまもあらず、轟然ごうぜんたる青天せいてん霹靂へきれき
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)