間者牢かんじゃろう)” の例文
間者牢かんじゃろうさくわきへ来ると、例の奔流がドーッと耳をうった。山牢の穴も柵の中も見えない。見えないが老人は、そこで、夕陽時ゆうひどきの修羅のすごさを眼に描いた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「鴻山は住吉村から追っ払い、また一八郎はすみやかに召し捕りました。やがてこれも剣山へ送って、世阿弥同様、終身間者牢かんじゃろうの住人となりますわけで……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかにもその目的のために、真っ先に、剣山の間者牢かんじゃろうを訪れようと計っているが、さて阿波へ入り込んだ上には、さまざまな詮議せんぎ迫害がそれを拒むに違いない。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこに? それは剣山の間者牢かんじゃろうだ。彼はとらわれて十年の月日を、おそらく間者牢の中に送っているだろう。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
健康な心には、迷信のみうる闇はなかった。間者牢かんじゃろうのことも俵一八郎の死も、阿波守の脳裏からいつか駆逐されて、その後には、ただ大きな望みだけがめていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣山の間者牢かんじゃろうの由来——天草あまくさ当時のいきさつ、また義伝公毒害のことから徳川家へ根強い怨恨をふくんでいる訳——。それらの話をきくにつけて、弦之丞は心のうち
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目安箱の御上書ごじょうしょやら、左京之介さきょうのすけ様のお計らいで、弦之丞様へ、ごく密々なお墨付が下ったのだ、早くいえば将軍家のおこえがかり——、阿波の間者牢かんじゃろうにいる世阿弥よあみに会い
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この洞窟の中こそ、つるぎ山の間者牢かんじゃろうである。かれが十一年の春秋をくり返した阿波の山牢やまろう
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、阿波の間者牢かんじゃろうとらわれたまま、十年あまりも生死の消息をすら絶たれていた人。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……そうだろうと思います、いや、こっちで下手へたを踏んでいると、いつ、この間者牢かんじゃろうへあらわれて、世阿弥を助けだそうとするか分りません。なにしろ、ご要心なすって下さい」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間者牢かんじゃろうの者を殺害した? 誰が? 誰がそんな意志をもって悪戯をいたしたか」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五十けんの町年寄から、お綱は甲賀という由緒ある侍の娘だということを、鴻山にいってきてはあったが、現在、阿波の間者牢かんじゃろうにいる世阿弥の血をうけたものとは、自分も、その時に初めて知って
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)