遊女おんな)” の例文
その洞院左膳様と、花村様とお二人が、いずれも殿様のおためじゃといって、一人の遊女おんなを争うとは、どうにも可笑おかしなことではある
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そしてまた……。正成は今上きんじょうの御一方にちかいまいらせた一朝臣あそん。さよう、江口の遊女おんなのように、世を浮舟と渡る上手なすべは知り申さぬと」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本来なら今朝の雪では、遊女おんなも化粧を朝直しと来て、青柳か湯豆府とあろう処を、大戸をくぐって、むかえも待たず、……それ、女中が来ると、祝儀が危い……。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鳰鳥は誰とでもそうであった。白髯の殿とは云うまでもなく、誰とでも枕は交わさなかった。それがかえって彼女を光らせ、彼女を全盛の遊女おんなにした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……不首尾重って途絶えているけれど、中洲より洲崎すさき遊女おんなが大切なんだ。しかし、心配は要るまいと思う。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「正成は武人です。また、笠置へ伺候してこのかたは、身も心も今上きんじょうの御一方に誓いまいらせた一朝臣あそん。さよう、江口の遊女おんなのように、世を浮舟と渡るすべはよう存じておらぬ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつづけの客や情夫おとこなどを、宿の遊女おんな達はこの茶屋まで、きっと送って来たものであった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女郎屋の朝の居残りに遊女おんなどもの顔をあたって、虎口ここうのがれた床屋がある。——それから見れば、旅籠屋や、温泉宿で、上手な仕立は重宝ちょうほうで、六の名はしち同然、融通ゆうずうは利き過ぎる。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
六条の遊女宿あそびやどで気焔をあげていた一座の武士たちが、意味ありげに、遊女おんなたちへ
とか云って遊女おんなが、その帯で引張ひっぱるか、階子段はしごだんの下り口で、げる、引く、くるくる廻って、ぐいと胸で抱合った機掛きっかけに、頬辺ほっぺた押着おッつけて、大きな結綿ゆいわたの紫が垂れかかっているじゃないか。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遊女おんなは幾人でもんでくれる。それで馬鹿騒ぎをするでもない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)