)” の例文
いつか、杖も柄香炉えこうろも、手になかった。生命いのち一つを大事に、よろい歩くのが、やっとであった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あげくの果て、着ている物まで野盗に襲われてはぎ取られてしまい、よろう如く十幾日かを逃げあるいていたが、顧みるといつか自分のそばには、もう甥の袁胤えんいんひとりしか残っていなかった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よろうて、一つの巌頭がんとうへ取ッついた。そして、下をのぞいたが——そのとき、かなたの岸から、石切り男の一群が、瀬の岩から岩を跳び渡って来るのが見えた。盛遠は、パッと、すぐ逃げた。
まだまだ落人おちゅうども通ろう。怪我人もよろうて通ろう。門を閉じておいては、それらの衆が気づかずに過ぎてしまう。——れる場所がなかったらくすりへもむしろをしいて、はいれる限りおれせい
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)