跛足ちんば)” の例文
えゝも、乳母うばめは跛足ちんばぢゃ! こひ使者つかひには思念おもひをこそ、思念おもひのこよるかげ遠山蔭とほやまかげ追退おひのける旭光あさひはやさよりも十ばいはやいといふ。
昌作は聞かぬ振をして、『英吉利イギリスの詩人にポープといふ人が有つた。その詩人は、佝僂せむし跛足ちんばだつたさうだ。人物の大小は体に関らないサ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
娘お糸、——十九年間手鹽にかけて輝くばかりに美しく育てた一人娘お糸の命を救ふ爲には、與次郎はもう跛足ちんばなんかの眞似をして居られなかつたのです。
……君も知ってるだろうが、鶴子を殺害した犯人はひどい猫背で、背骨が側彎し、その上跛足ちんばだということが判っている。これだけいったらあとはもう諄くいう必要はあるまい。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
跛足ちんば眇眼すがめでちんちくりんの山本勘助かんすけの例を引いて、体の器官に不備な所があるのは却って威容を増すものだなどゝ云う風に上手に吹っ込む者があると、だん/\当人も慰められて
二十七八のまだ若くて元氣な男ですが、眞つ黒で少し跛足ちんばで、おまけに小人に近い小男です。
因業いんごふで通つた宗太郎、町人をいぢめて、充分金は出來たといふ話ですが、跛足ちんばで變屈者で、一二年越し口説き廻され乍ら、お品はどうも受け容れる氣になれない相手だつたのです。