謂無いはれな)” の例文
わが十年の約は軽々かろがろしく破るべきにあらず、なほ謂無いはれなきは、一人娘をいだしてせしめんとするなり。たはむるるにはあらずや、心狂へるにはあらずや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
家の内にはおのれ老婢ろうひとのほかに、今客も在らざるに、女の泣く声、ののしる声の聞ゆるははなは謂無いはれなし、われあるひは夢むるにあらずやと疑ひつつ、貫一はまくらせるかしらもたげて耳を澄せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これにいで、彼はそもそも何のゆゑ有りて、肥瘠ひせきも関せざるかの客に対して、かくばかり軽々しく思を費し、又おもひかくるの固執なるや、その謂無いはれなおのれをば、敢て自ら解かんと試みつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)