諜者いぬ)” の例文
「礼などは、どうでもいい。早くこの場をあとになさい。祭りの庭には、いまの権三のほかにも、六波羅の諜者いぬがだいぶ入りこんでいる」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諜者いぬか、おのれは」右衛門尉は、曲者くせものの耳を引っ張っていった。痛さに顔をしかめた曲者の顔が斜めに長く伸びた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やいっ、介とやら。いや足利家の諜者いぬ、よくも多年わが領内にいりこんで、正季が目をくらましていたな!」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いきなりこういう物騒な奴が、お前さんたちの隠れ家へ飛びこんで来ちゃ、さだめし、妙に疑うかも知れねえが、決して、蜂須賀家の諜者いぬじゃありません。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どんな諜者いぬも、ここへはまぎれ込めません。分れば散所民さんじょみんの袋だたきにあい、骨まで消されてしまいますから」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、一角は先に笊組の諜者いぬとなって、隅田川で生不動の身内を鏖殺みなごろしにしようとした企みの手引きをしたことがあるため、なるたけ顔を見せないようにしているのだ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「されば、放免どもはいつか、弁ノ殿がここにおひそみのことまで偵知したらしく、日頃から居る地元の諜者いぬもみなげて、ここの出屋敷のぐるりを見張っておりまする」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さては平家の諜者いぬじゃ。右衛門尉うえもんのじょう、打ちすえて、口をお開かせなされ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この諜者いぬめ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)