見好みよ)” の例文
場所、東京、山の手の一隅、造作いやしからねどりたる三間程の貸家建の茶の間、ささやかなれど掃き浄められて見好みよげなる庭を前にす。
好い手紙 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
が、いぢけたのでもちゞんだのでもない。吹込ふきこけむり惱亂なうらんした風情ふぜいながら、何處どこ水々みづ/\としてびやかにえる。襟許えりもと肩附かたつきつまはづれも尋常じんじやうで、見好みよげに釣合つりあふ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
されど狼狽うろたへたりと見られんは口惜くちをしとやうに、にはかにその手を胸高むなたかこまぬきて、動かざること山の如しと打控うちひかへたるさまも、おのづからわざとらしくて、また見好みよげにはあらざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
両側に見好みよげなる仕舞家しもたやのみぞ並びける。市中いちなかの中央の極めてき土地なりしかど、この町は一端のみ大通りにつらなりて、一方の口は行留ゆきどまりとなりたれば、往来少なかりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
衣紋えもんの正しく、顔の気高きに似ず、見好みよげに過ぎて婀娜あだめくばかり。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)