蝶々髷ちょうちょうまげ)” の例文
船にのるのだか見送りだか二十前後の蝶々髷ちょうちょうまげが大勢居る。端艇へ飛びのってしゃがんでつばをすると波の上で開く。浜を見るとまぶしい。
高知がえり (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
只内の裏に、藩の時に小人こびとと云ったものが住んでいて、その娘に同年位なのがいた。名はかつと云った。小さい蝶々髷ちょうちょうまげを結っておりおり内へ遊びに来る。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
犬蓼いぬたでの赤い花の上に座ってお萩をたべる子供たちの、にこやかな頭の上には高い空があった。文化の昔の女団長の頭の、やっと結わえた蝶々髷ちょうちょうまげには、赤トンボがとまっている。
いつも首を集めて咡き合う群の真中には蝶々髷ちょうちょうまげだけ外の子供より高いお勝がいて、折々己の方を顧みる。何か非常な事を己に隠して遣っているらしい。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)